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間違いを、あとから正解にした人の話 

間違いを、あとから正解にした人の話

From:押田力

いつも大変お世話になっております。
イノセルの押田です。

※実話をベースにしておりますが、
 特定を避けるため背景や設定を一部変更してお届けします。

先日、ある企業の方々と
会食する機会がありました。

※詳細は伏せますが、数百名規模の組織で、
 営業部門だけでも数十名を抱える、
 非常に大きな事業を展開されている会社です。

先方は、人事権を持つMさんと人事担当のHさん。
※Mさんは営業と育成の責任者も兼務しています。

当社からは、営業担当と代表の私。

4人で食事をしながら、
これまでご紹介した方がその後どう活躍されているか、
今ご紹介中の方の感触はどうか、そんな話をしていました。

人材の話をしていると、自然と組織の話になります。
その中で、とても印象に残る人事異動の話を聞きました。

ある時、その会社で
育成チームのメンバーが退職することになりました。

急ぎで後任を決めなければならない。

そのタイミングでたまたま役員会が開かれました。
ただ、たまたまその場に人事権を持つMさんは不在。

限られた情報の中で議論が進みました。

「誰を異動させるべきか」

候補者を一人ずつ見ていく。
業務適性、現場の状況、組織全体のバランス。

その結果、消去法的にAさんしかいない、という結論になりました。

客観的に見れば、確かにその判断は合理的でした。
全体最適で考えれば、間違っていない。

後日、その異動案の共有を受けたMさんは、
Aさんと面談をすることになります。

「この異動の打診を聞いて、どう思うか」

本来、Mさんの仕事はAさんを異動させることでした。

欠員が出た育成チームを埋める。
組織全体を見て、最適な配置を実行する。

それがミッションです。

でも、Aさんは涙を流しながら
言ったそうです。

「営業に残りたいです」

その言葉を聞いて、Mさんは考えました。

この全体最適の人事異動を、本当に進めていいのか。

組織図だけを見れば、Aさんを異動させるのが正しい。
役員会での議論も合理的。
経営側の判断としても筋は通っている。

でも、目の前のAさんを見ると、
とても正解だとは思えなかった。

これは部分最適の考え方かもしれない。
組織の経営を担う立場としては、
間違った判断なのかもしれない。

それでも、

「この異動は違う」

そう感じたそうです。

結果として、MさんはAさんを異動させず、
営業に残す判断をしました。

そしてAさんはMさんの心意気というか自分と向き合ってくれたこと、
様々な感情があったのだと思います。
結果として、Aさんは営業で活躍しています。

さらに数ヶ月後。

別部署で、退職を考えているBさんが出ました。

話を聞いてみると、Bさんは今の部署では力を出し切れていない。
でも、育成チームの仕事とは非常に相性が良さそうだった。

そこで、Bさんを育成チームへ異動。

結果、Bさんは活躍し、昇進までしました。

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※ここで会食の場に戻ります。

この話の流れで、MさんがHさんに聞きました。

Mさん:
「あの時、Aさんを異動させてたら、
 結局どうなってたと思う?」

Hさん:
「いやー、辞めてたと思いますよ。
 別に育成に合っていたわけではないですからね」

Mさん:
「そうでしょ?
 俺もそう思うもん。絶対辞めたよ」

Hさん:
「そうなったら、また誰かを採用するか、
 異動させることになっていたと思います」

Mさん:
「だって、泣きながら
 “営業をやらせてください”って
 言ってくる人を異動させても、
 絶対うまくいかないでしょ」

Hさん:
「本当にそうですね」

Mさん:
「で、しばらくしたら
 Bさんが“辞めたい”って
 言ってくるわけでしょ」

Hさん:
「結果的に、Bさんが育成チームに
 はまったのも大きかったですよね」

Mさん:
「いや、本当にそうだよね。
 結果として、ベストな人事異動になったでしょ」

Hさん:
「いや、本当にそうですよね。
 Mさんは、どこまで分かっていたんですか?」

Mさん:
「そんなの分かるわけないじゃん(笑)」

Hさん:
「ですよね(笑)」

Mさん:
「でも、俺の中では部分最適も大事だと思う。
 会社の前に、その人の人生があるわけで」

Hさん:
「その人が輝ける場所を用意する、
 ということですね」

Mさん:
「そう。それが俺の仕事だから」

Hさん:
「全体最適だけで見ると、
 見落としてしまうものがありますね」

Mさん:
「部分最適でいいんだよ。
 あとで正解にすればいいし、正解にするんだよ」

Hさん:
「あとで正解にする」

Mさん:
「そう。あと、俺なら正解にできるしね(笑)」

※MさんはこのときAさんの営業責任者であり、
 育成の責任者でもありました。
 「正解にできる」は、根拠のある言葉でした。

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この話を聞いて、強く感じたことがあります。

「今の組織にとっての正解」が、
必ずしも「中長期で見た正解」とは限らない。

欠員が出た。
早く埋めなければならない。
候補者を比較する。
一番それっぽい人を選ぶ。

これはよくある意思決定です。

そして多くの場合、間違ってはいない。

ただ、その判断が“人”ではなく“穴”を見ていると、
短期的には整っても、中長期では崩れることがあります。

全体最適は大切です。

ただし、全体最適とは、最初から完成された正解を選ぶことではない。

人が活きる場所を見極める。
その人が力を発揮できる環境を考える。
一時的には、組織として負荷がかかる場面も出てくる。
そこで耐える。

そして、その“部分最適”を、後から全体最適まで引き上げる。

それが、本当のマネジメントなのだと思います。

短期で見れば、Aさんを異動させる方が合理的だったかもしれない。

でもMさんは、

「この決断を、あとで正解にする」

という覚悟を持っていた。

だからこそ、結果として組織全体にとっても最適な形になった。

マネジメントに必要なのは、
最初から完璧な正解を選ぶ力ではない。

不完全な選択を、覚悟を持って正解に変えていく力。

なのだと思います。

ー押田力

追伸:
組織の営業力や、採用の進め方について、
何かお悩みがあれば、いつでも気軽にご相談ください。
私自身の今の試行錯誤も含め、お話しできればと思います。

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執筆者プロフィール
名前:押田力

プロフィール:
慶應義塾大学商学部卒業後、
株式会社ジェイックに入社し営業、マーケティングを約12年間従事。

その後、IPOに向けた人事異動に伴い財務、
法務担当としてコーポレート領域を経験。

その後、サイジニア株式会社にて
経営管理部の一員として
法務および子会社経理を担当。

複数の事業会社における
バックオフィス体制の整備・改善を推進する。
2024年よりイノセル株式会社に参画し、
経営企画部にて管理部門全般の責任者を務める。

2025年5月、代表取締役に就任。
経営基盤の強化と組織成長の両立をテーマに、
数字と人の両面から持続的な成長を支える経営に取り組んでいる。

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